失敗しないためのインプラント選び10か条

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1、インプラントは最善の治療ではありません!

多くのインプラント広告はメリットばかりを謳い、デメリットはあまり掲載していないことが多いようです。世の中全てに言えることですが利点だけではありません、何でも欠点はあります。

インプラントの問題点(欠点)
  • 保険がきかない(自由診療)
  • 手術が必要になるため術後痛み・腫れが出る可能性がある
  • 治療期間がブリッジや義歯等に比べ長い場合がある
  • メンテナンスフリーではなく、術後はメンテナンスが必要になる
  • 技術は進歩したが、まだ一生モノではない
  • 携わる歯科医師の技量の格差が大きい
  • 成功率はまだ100%ではない
  • 最新のインプラント治療が最良とは限らない
  • インプラントありきで残存歯を保存しようとしない
  • 営業優先で倫理的に問題がある医療機関も見受けられる

自分の医院に患者さんを呼び込むために良いことしか書いていないホームページの甘言に惑わされないよう、インプラントのデメリットも知っておいてほしいと思います。
特に、「年間〇〇〇本の実績」と謳っているクリニックは治療の優先がインプラントであり、「歯を残す」努力をしているのかは、甚だ疑問です。

2、本当に貴方の歯は残せないのですか?もしかしたら残せるかもしれませんよ!

インプラント治療を検討中の方には、真逆で戸惑うと思います。
そもそも、インプラント治療は歯が保存出来ない時の為にある治療で、歯を残せるのなら検討する必要はありません。
歯を失う原因は大きく分けて3つあります。
虫歯」「歯周病」「破折」です。
いずれも近年は技術の進歩により、以前より残せる確率が高くなってきています。
マイクロエンド、レーザー、歯周再生療法など、10年前とは比べものにならないほど技術は向上しています。
筆者の医院でもインプラント治療の希望で来院された方の約3割は、診断の結果保存可能で歯を残す治療を行いました。予後も良好です。
歯が残せないと宣言された方は、一度セカンドオピニオンで本当に残せないかを確認してみるのも良いのではないでしょうか。

3、「ウソ、誇大、まぎらわしい」広告ではありませんか?

別頁でも書いてありますが、広告を鵜呑みにてはいけません。
歯科の広告で、特にインプラントと矯正は「盛り過ぎ」広告のオンパレードです。
詳しくは「歯科広告には騙されるな!」をお読みください。

4、非常用電源の備えはありますか。

非常用電源
日本は災害国家です。最近でも令和元年8月の台風16号では千葉県、立て続けに同年10月の台風19号では東日本の各地で未曾有の災害に襲われました。その時は、水や電気のライフラインが1ヶ月以上停止し、生活に大きな支障を与えました。
手術は一般診療と異なり水道水を使用しません。全て生理食塩水なので、水道が止まっても手術だけなら大丈夫です。

問題は電気です。

もし、インプラント手術中に電源が落ちたら、と想像しただけでもゾッとします。ドリルが途中ならスタックして抜けなくなります。仮に埋入を中断しても、切開した部位を縫合しなければならず、照明がない環境下での縫合は不確実にならざるを得ません。これは辛いです。
災害対策として、最低2000Wh以上の電力量が必要です。後述の手術室以上に非常用電源は要チェック項目です。

5、血液検査、点滴の全身管理されてますか?

インプラントオペでは、何が起こるかわかりません。ショックや、血圧の変動などの偶発症の発症がゼロという保証はありません。故に、患者様の血液検査は必須項目です。
本当は、採血が苦手なくせに「当院では血液検査などの大げさな処置を行いません」とうそぶく歯科医がいます。
血液検査はそんなに大げさですか?
仮に毎年検診を受けていても、検査から6ヶ月経過すれば体調の変化が起きても不思議ではありません。また、検診とインプラントでは検査項目が異なるので、企業や自治体の検査結果では役に立たない事が多々あります。よって、インプラント治療前の血液検査は必須です。

手術時の静脈確保(点滴)も重要です。前述の通り、何が起こるかわかりません。特に、ショック時の血圧低下の際は、血管が細くなっているので、ベテランの看護師でも血管を見つけるのが難しいです。
ですから、術前からの静脈確保は必須です。それでも、偶発症の起こる確率はゼロ%ではありません。
万が一、偶発症が起きた場合に備えて、BLS、ACLSの救急蘇生のライセンスを持った歯科医師がいる歯科医院は安心できます。

6、「全身麻酔」と謳って、実際は「静脈内鎮静法」

静脈路確保(点滴)
歯科医師自身が間違って認識しているか、広告会社が適当に書いたか分かりませんが、「全身麻酔」と「静脈内鎮静法」は根本的に違います。
もし全身麻酔と書いているのに、実際は静脈内鎮静法だったら契約違反ですよね。また、「寝ている間に終わる」という表記も、全身麻酔なら100%ありますが、静脈内鎮静法では、個人差もあり「寝ない」人もいます。
利点欠点を聞いて、違いを確認する必要があります。

7、手術室は必須です

手術室がなくても手術は可能です。
仮に手術室がない場合はパーテーションで囲い、他のユニットを一切使用していないなら問題ないというデータが出ています。しかし、手術をしている横で歯を削っていたり、他の処置をしているような環境では、粉塵が舞って空気が悪くなります。結果、感染のリスクが高くなります。
また、手術室は他の部屋とは交通していない、独立した空調設備が整っているのが必要条件です。さらに手術には麻酔装置、輸液ポンプ、TCI1ポンプ、といった機材も必要なため、手術専用の部屋はあった方が良いと思います。それと、前述の「非常用電源」の確認も必要です。

8、適正価格ですか?安いのはホントに大丈夫?

下部インプラント本体だけの価格を表記をしているホームページがあります。上部構造(歯冠部)を含まないので、とても安く感じます。必ず、上部構造を含んだトータル金額を確認してください。
また、手術だけでなく、その後に発生するメンテナンス費用、メンテナンス間隔も併せて確認してください。

9、実績のない治療手技

実際は施術したことが無いのに、いかにも実績があるかのようなホームページを見ます。
筆者の出入りのインプラント業者さんから聞きました。専用の部材でなければ出来ない治療の筈なのに、過去に部材の注文が全く無いにも関わらず、いかにもやってますと堂々とホームページに載せていて困惑している、という話でした。これは、歯科医というより、人間としてのモラルを疑います。
実際、インプラント治療は埋入手術だけでなく、歯周外科、全身管理、補綴、審美など口腔外科以外のスキルも要求されます。見栄っ張りな歯科医師は、さも何でも出来るかのように繕います。患者さんは、実験動物ではありません。十分に習得してから告知すべきです。

以下は注意すべき手技、手術の一例です。

All-on-4
抜歯即時埋入
即時埋入即時負荷
ブロック骨移植
サイナスリフト(上顎洞挙上術)
遊離歯肉移植術
結合組織移植術

などです。

前述の通り、ホームページは実態がなくても何でも書けます。医院は正確な情報を提示する義務があります。

10、インプラントの知識だけではダメです。

グローバルトリートメントである、インターディシプリナリー(注2)アプローチですか? 横文字でわかりにくいので解説します。つまり、世界基準の包括的治療の事です。前述と重複しますがインプラント治療は、周辺科目も関わってくる総合的な治療です。インプラントの埋入手術の他に、歯周外科、補綴、咬合、審美、麻酔など、様々な科目が関わってきます。素晴らしい結果を求めるには、それぞれのスペシャリストの力が必要です。外科主導型、補綴主導型とか言われますが、理想は全部主導型です。一人の力には限界があるので、多方面からのチームアプローチが求められます。

(注2):多くの分野の専門知識や経験が必要な研究課題などにあたるとき、さまざまな領域の学者や技術者が協力し合うこと。また、そのさま。学際的。

11、メンテナンス、リカバリーを重要視してますか?

インプラント治療は、上部構造が入って終わりではありません。そこからが、長く持たせるためのスタートです。インプラントも天然歯と同じように、日々のメンテナンスが重要です。