ここまで述べた内容で、日本のインプラント製品に対して「安い=悪い」ようなイメージを持たれたかもしれませんので、誤解の無いように説明します。
決して日本製が劣っている訳ではありません。
日本の工業製品は世界一と思っている方が多いと思います。確かに自動車やカメラ等では世界一だと筆者も思います。しかし、ことインプラントにおいては、残念ながら世界一とは言えないのが現実です。
近代インプラントはスウェーデンが発祥で、その後スイスが製造に携わり、常にヨーロッパが世界を牽引してきました。日本のメーカーの製造量を全て合算しても、世界のシュアの1割にも満たないのが現状です。
日本製のインプラントは「比較的安い・精度が高い・衛生的」です。何も問題はありません。むしろ、世界のトップクラスのクオリティです。しかし、表面性状や材質など世界から遅れている、といった印象は否めません。その理由は3つあります。
1、認可の問題
日本の役所が許認可に対して厳しいのは、皆さんも知っていると思います。
そのため、せっかく優れた発明や発見であっても、臨床に使えるまでの期間が諸外国と比べ長く、その間に諸外国に追い越されているのが現在の日本の医療の問題であり、今後の課題でもあります。
2、歴史
スイスは、ご存じのローレックスやオメガなどの高級機械時計の企業が多数あります。インプラントも機械時計と同じ精密加工が施される工業製品です。スイスにあるStraumann(ストローマン) の工場は広大な敷地にオメガと隣り合わせで建っています。
日本にも山梨や長野に優れた精密機械の会社がありますが、製薬会社等とのジョイントベンチャーがありません。スイスにはロシュやノバルティス等の古くからの製薬会社があります。
そのため、医・工学のジョイントベンチャービジネスの分野では日本の歴史より古く、ヨーロッパ勢に軍配を上げざるを得ません。
3、市場
日本のメーカーは先ほど申し上げた通り、世界では後発で市場に参入するのが遅過ぎたのだと思います。
それと、国内で認可された後の海外展開ですから、外国勢には到底敵いません。世界市場では Nobelbiocare(ノーベルバイオケア)社、Straumann(ストローマン)社、Astra(アストラ)(DentsPlay(デンツプライ)社)、ZimmerBiomet(ジンマーバイオメット)社で世界の60%以上(2015年)が現在の状況です。
日本のメーカーもいつかは世界のトップになる日が来ると信じています。